| | | | | トスカーナ
| トスカーナの魅力。それは個性豊かな小さな街、天才たちの残した芸術作品の数々、そしてどこまでも続く美しい自然・・・。訪れた人をとりこにするものがトスカーナには溢れています。この地を舞台にした映画や小説、旅行記の数々は枚挙にいとまがありません。ある人はフィレンツェで、またある人はアレッツォやサン・ジミニャーノで。
ローマからユーロスター(イタリアの新幹線)でフィレンツェへ向かうと、トンネルの多いこの路線は、白ワインの産地として有名なオルヴィエートを抜けてトスカーナ州へ入ったあたりから景色が変わります。 なだらかな畑の中に規則正しく並んだ糸杉の列を車窓からながめていると、グイド・ピオヴェーネ(国中を旅しイタリア人とイタリアを描ききったジャーナリスト)がその著書『ヴィアッジョ・イン・イタリア(イタリア旅行記)』で書いていた言葉を思い出します。
「トスカーナはその美しさのおかげで世界中において最も有名な土地になった。“甘美で優雅な風景”というのがトスカーナを表す共通の言葉だ」。
フィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ駅で乗り換えてポッジボンシまで電車で行き、そこからはバスでサン・ジミニャーノへ。「美しい塔の街」として世界遺産に登録されているこのサン・ジミニャーノは、イタリアワインの最高ランクDOCG(統制保証原産地呼称ワイン)の白ワインに指定されている、ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノの生産地でもあります。
きゅっと冷えたヴェルナッチャを楽しむのは別の機会に譲り、今日はしみじみと赤ワインを飲みたい。そんな気持ちで見つけた小さなエノテカは、サーモンピンクに塗られた壁に個性的な絵画が架かり、真っ赤なソファーの前に大理石の小さなテーブルが置かれている。まるで家の居間でくつろいでいるかのようなたたずまいの店。
エノテカのご主人が選んでくれたトスカーナ産の赤ワインをゆっくりと味わっていると、最初神経質そうに見えた彼とも、いつの間にかワインをはさんで世間話が始まり、アルコールの力も手伝ってか普段以上におしゃべりになってしまいます。そんな二人はここにそっと残し、中世の静かな雰囲気が残るサン・ジミニャーノの街へ。
トスカーナでは紀元前はるか7世紀の昔からブドウが栽培されています。この土地とワインを決定的に結びつけ、その地位を不動のものにしたのはリカーソリ男爵やアンティノリ家、フレスコバルディ家といった中世の名門貴族の力でした。彼らが築き上げたワインの歴史を現在に引き継ぎ、さらに発展させているのがこうした貴族の子孫と新世代の生産者たち。
イタリアワインの代名詞キャンティやアメリカのワイン雑誌『ワイン・スペクテイター』で伝説的な高評価を獲得したブルネッロ・ディ・モンタルチーノ、伝統に捉われない新しい醸造法で一躍トップスターとなったテーブルワインクラスのスーパー・タスカン。さらにヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチャーノ、カルミニャーノ、モレッリーノ・ディ・スカンサノ、ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノ、モンテカルロ、そしてヴィンサントなどなど。
「伝統と革新」。この二つのバランスが上手に保たれながら、トスカーナでは数々の素晴らしいワインが生まれ続けています。
サン・ジミニャーノで一番高いグロッサの塔にのぼると、緩やかなうねりがどこまでも続く畑とその中にぽつん、ぽつんと点在する茶色の屋根が目の前に広がります。こんなトスカーナの原風景を眺めていると、なぜこの土地とここで生まれるワインが世界中の人々にずっと愛され続けているのか、その理由が少し解る気がします。 トスカーナの美しい自然と豊かな大地。ここで生まれるちょっとした魔法を秘めたトスカーナワインの魅力、どうぞあなたも存分に味わってみてください。
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